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 開発は、あくまで最高峰と名の着く場所で

あえて困難な壁を打ち立てて挑む。
そこには、今までにない喜びが存在するゆえ、極限に挑み続ける。
その哲学が常に第一線のアーティストを見守るアーティストピアノサービスの開発陣営を支えている。

アーティストたちや大手興行主、レコード会社などから絶大な信頼を獲得し、選ばれることに意味があると我々は公言してきた。たまたまその場に居合わせるということでは意味はない。何であれ選び抜かれるという積極的な思考の下、洗練の世界観が存在しなければ全く意味をなさなく、選ばれる理由にこだわってきた。

我々の世界観を例えるならば、世界最高峰の自動車レースF1が最もふさわしいであろう。
F1マシンの開発フィールドがサーキットという最高の緊張感を与えられる場であるならば、我々コンプリートピアノの開発フィールドは「コンサート」という過酷を極めるフィールドである。
正に最高峰と言い切れるには理由がある。F1マシンは、その場の温度、その時の湿度、操るその人(レーサー)のみにセッティングを合わせ、たった一瞬に全てをかけベストタイムを叩き出す。正に我々が得意としているフィールドを例えるにはふさわしく、ピアノの設置されている場所での気温、体感温度、湿度、ピアノ自身のコンディション、そしてアーティストの体調や精神状態、曲目や楽曲をも考慮したセッティングを出し、その瞬間でのベストサウンドを探し出す。

そして、我々の技術は、レーサーたる『アーティスト』によって洗練と美学が注ぎ込まれて行く。
こうして開発された『コンプリートピアノ』は、世界最高峰のアーティストを支え切ってきた極限の音楽的美学と、最高性能と言わしめる表現力が注ぎ込まれる。

また、この世界観と哲学を維持するには、感性豊かなスーパースターと、それを支える頭脳明晰な首脳陣が必要となる。正にその人物とは当社のチーフコンサートチューナー・古屋であり、彼の天才的な音楽的直観力と鋭い洞察力、そしてその技術を心から理解し、適材適所で最もふさわしい状況判断を行う開発陣営によって、コンプリートピアノは開発から製造までを一貫してプロデュースされている。



 開発ドキュメント。確信は感動とともにやってきた。

コンプリートピアノの開発という経緯について、少し話を掘り下げてみたい。
世界に誇る我国のピアノ産業の代表、そして今やワールドワイドの知名度を持つヤマハのピアノを、更に「チューニング」して全く新しいピアノに仕上げる。そしてそれは一部の部材のみを西欧製の物に交換するような従来の「修理の延長線上」という概念と決別し、「チューニングメーカー」という立場を以って完成した新しいピアノである。

ここで、最高峰のピアノとして、またコンプリートピアノの比較対照として、スタインウェイを上げてみたいと思うが、スタインウェイは自身でよく知っているつもりだ。それは自らがスタインウェイピアノのフルコンサートを自宅に所有し、ピアニストの友人たちを集めてホームパーティを開くことくらいは毎週のように行っているからだ。しかも、こだわりにこだわったスタインウェイピアノであり、黄金期のスタインウェイを求めて日本中を探して回った経緯からもそのこだわりをお察しいただけると思う。そのスタインウェイと比較しても、このコンプリートピアノの完成度には驚かされた。何故そこまでに支持されるのかが今一つ理解し切れていなかったが、その音に触れた瞬間に全ては解決してしまった。
疑問を一気に解決してしまったその瞬間は、やはりトップアーティストによるものだった。
古屋が担当するレクチャーコンサートに同行した折、日本屈指のオーボエ奏者:古部賢一氏の演奏を、2クラス(173cm)のピアノで聴く機会があった。小澤征爾氏が音楽監督というということで、古屋も相当に入れ込んでいたが、果たして国産ピアノを改良したくらいで、世界的音楽家たちに対応できるほどのピアノになるのか不安は十分にあった。しかも200人級のホールで、あり得ないようなシチュエーションに正直凍りつくような恐怖感が私に襲ってきた。この企画でもしクレームが付けば、これまで当社が積み上げてきた信用や実績は水の泡になってしまう。しかも音楽業界での立場も危うくなる。あまりの大胆不敵な古屋の行動に私は不安と共に怒りさえこみ上げてきた。「何故スタインウェイを貸し出さなかったんだ」と。
しかし古屋は自信満々で私にこう言い放った。
「大丈夫ですよ。僕がどれくらいの数のスタインウェイを見てきていると思っているんですか?そして世界的アーティストたちも、どれくらいの数で知っていると思っているんですか?これまでに幾らでも修羅場を潜り抜けてきている自分ですよ。僕については鈴木さんが誰よりもご存知でしょう?その目で見ても十分にこのピアノならばトップアーティストに対応できるよう仕上げてあります。この企画は、スタインウェイでは移動が多すぎて持ちこたえられない。今回は、コンプリートが適任なんです。一番の理解者である鈴木さんには信用してもらいたい。」
200人級のホールで催される音楽を作り上げ、トップアーティストの音楽を国産の2クラスサイズのピアノで支え切ることなど、絶対に不可能だと思い込んだ。しかし古屋は笑顔でいる。なんて奴だ・・・このときばかりは「こいつは馬鹿か天才のどちらかでしかない」と心底思った。

ついに演奏が始まった。「大丈夫なのか?アーティストの感想は?音楽的な空間を作り上げられるのか?これからどうなってしまうのか・・・」と背中に冷たいものを感じながら、本番の音楽に聞き入った。
「んんん、なんだこれ・・・。あれ、どうしたんだ・・・。自分の耳が自社のピアノ寄りで、良く聞こえてしまうのか・・・。いや、そんなことはない!良いピアノの音だ。それ以上に、このピアノで日本を代表する演奏家を支え切っているぞ!」と、興奮に似た感動を覚えた。
単純に美しく、透明感ある音色。響板を生かしきれば、国産でもここまでの性能と音楽性を持たせることが出来るとは・・・
そして思った。このピアノを販売しよう。音楽界の為に、いや、ピアノを愛する全ての人にこのピアノの良さを知ってもらいたいと、一ピアノ愛好家という立場からも思えてならなかった。


コンプリートピアノは、実際に古屋のサポートするピアニストや音楽大学の教師たちが、こぞって使用している。それは東京藝術大学を首席で卒業した人物や、桐朋学園を首席で卒業、もしくは日本音楽コンクールの優勝者、入賞者も積極的にコンプリートピアノを自らのピアノとして自宅に設置している。『スタインウェイに代るピアノなどあるわけがない』私はそう思い続けてきたし、今もその考えに変わりはない。しかし、この実績というか、実際にトップの世界に居合わせる演奏家や教師たちが、このピアノを選んでいることは、否応なしに認めざるを得ないのである。それくらいに、このピアノの完成度というものは高い。少なくとも、スタインウェイに代るものではなくとも、国産ピアノとスタインウェイの大きな開きを埋める位置に存在すると言えよう。また、全国にこのピアノが納品されていることも付け加えたいところだ。


そして、このピアノを販売するからには、常に進化し続ける魅力的なものでなければならない。「コンサート」という名の開発フィールドで、アーティストからの声をダイレクトに吸い上げて来た集大成でなければならなく、選ばれてきたというプライドをも盛り込む必要がある。
 

「これでどうだろう?行けるか?」 「うん、これなら行ける」

二人がここに辿り着くまでに2年という時間を費やし、ついに当社のコンプリートピアノの生産が決定した。どれだけの弾き手に支持を得られるかはわからない。ただ、我々をここまで突き動かしたものは、「音色への情熱」、そして私の目の前にある開発時のベースとなった一台の「コンプリートピアノ」から奏でられる音楽だった。


私はピアノを愛する全てのピアノ奏者に訴えたい。

「証拠は、ここにある」

私たちの手許に置かれている「開発に用いられた原器」が、それを訴えている。

文 開発担当者



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